TechBBQは、デンマークのクリーンテックエコシステムに関する緻密な分析レポートを先週発表
しました。その中から特に投資関連の主要トピックをここでご紹介します。
現在デンマークのエコシステムを形成している計4028社のスタートアップとスケールアップのう
ち、409社はインパクトスタートアップ（持続可能性と、社会または環境へのポジティブな影響、そ
して経済的利益が同時に生成されることを意味する）に分類することができます。このうちの310社
がクリーンテックとされ、デンマークのインパクトスタートアップの中で極めて重要な業種です。今
回の分析はこれら310社を基にして行われました。
デンマークエネルギー技術拠点の具体例：スマートグリッド、IoT &デジタルインフラ、蓄熱、洋上
風力発電、エネルギー高効率技術、バイオエネルギー技術、発電所エネルギー、燃料電池、セントラ
ルヒーティング技術など。
デンマーク環境技術拠点の具体例：新素材、循環型生産とビジネスモデル、生物多様性、土地利用と
大気質、廃水・廃棄物処理の最適化、土地と大気汚染の緩和など。
デンマークのクリーンテックスタートアップ310社の内訳は、シードステージ184社、アーリーステ
ージ95社、レイトステージ29社、不明2社。実際に提供された資金に関して言えば、310社全体に対
し、投資の割合はわずか33％で、投資情報を開示しているのは64社です。データによると平均投資額
は2260万DKK（約3億8650万円）、最高投資額は2億6700万DKK (約45億6670万円)。各カテゴリー別
スタートアップの詳細についてはTechBBQまでお問い合わせください。
環境対策への意識やその必要性の高まり、そして持続可能な新ソリューションがますます求められて
いる一方で、クリーンテック系スタートアップへの2016-2020年全体の投資比率は、ライフサイエン
スの18%, ICTの62%に対し、わずか7%。新規のクリーンテックベンチャーは人気度が低く、VC投資
家の目がなかなか向かないのが現状です。
マサチューセッツ工科大学が実施した調査によると、ライフサイエンスやICTが投資家の人気を集め
る理由の一つとして考えられるのは、投資利益率(ROI)の高さのようです。またスウェーデンや英国
と比べてデンマークのVC業界が小規模であることも別の要因かもしれません。2019年のデンマーク
での投資総額は40億DKK(約688億円)。それに対しスウェーデンは70-370億DKK(約1兆2050億〜6兆
3690億円)、イギリスでは37-1430億DKK(約6370億〜2兆4610億円)です。一般的に、小規模なVC業界
はその投資をより細かく業種別に区分する傾向があります。
VC投資家にとってのもう一つの問題は、そもそもクリーンテックベンチャーが非常に資本集約的で、
技術開発に重点を置いた長期にわたる商業化パイプラインを有していることです。加えてクリーン
テック開発のパイプラインは、ライフサイエンスなどと比べてわかりにくく、あまり構造化されてい
ません。 このことは 一般的にR&Dやプロトタイピングの段階後の企業に関心のあるVC投資家にとっ
て、負影響や未知の要因というリスクを高めます。
レポートにはクリーンテック投資の構造的問題の解決に向けた改善案なども幾つか提示しています。
北欧のインパクト投資（主にクリーンテック企業）にご興味のある投資家の方々は、下記の組織も
ご参照ください。
- Norrsken Foundation: インパクトスタートアップにフォーカスしたスウェーデンの非営利財団。
創業者の一人はフィンテックのユニコーン企業Klarna。2019年に持続可能性を重視する新企業対
象に1億ユーロを投資する新投資ファンドをクローズした。2020年にはスウェーデンが本社の大
手プライベートエクイティファンドNordic Capitalと提携し、61億ユーロのFund Xをクローズ
している。 - Nordic Impact: ノルウェーのインパクト投資ファンド。アーリーステージのインパクトスター
トアップの幅広いポートフォリオを揃える。インパクトにフォーカスするKatapult Accelerator
と、北欧のインパクト投資家、投資活動やコミュニティーをつなぐNordic Impact Investment
Networkを運営するドライバーでもある。 - +Impact: 北欧のインパクトコミュニティ最大のデジタルプラットフォーム。1000社以上のイン
パクトスタートアップと投資家をつなぎ、インパクトに特化したエコシステムの包括的データを
提供。投資家にはNorrsken、Nordic Ninja、Katapult Acceleratorなど。