北欧イノベーションエコシステム ニュースレター第4号では、2020年の日本の北欧諸
国へのベンチャー投資の動向と、コロナ禍の影響について考察します。8月現在で確認
されている北欧と日本間の投資事例は以下の通りです。
● フィンランド: Varjo (NordicNinja VC) – シリーズ C
● フィンランド: Logmore (NordicNinja VC) – シリーズA
● フィンランド: Sensible 4 (NordicNinja VC, 伊藤忠) – シリーズ A
● エストニア: Veriff (NordicNinja VC) – シリーズB
● エストニア: Cleveron (伊藤忠) – 研究開発の覚書
● エストニア: Clanbeat (Mistletoe) – シード
● スウェーデン: Voi (NordicNinja VC) – シリーズ B
● ノルウェー Brandpad (Thorgate Ventures III) – プレシード
● デンマーク: Grazper (横河電機) – M&A
● エストニア: Tera VC (伊藤忠) – LP
● エストニア: Thorgate Ventures III (Alesco ventures) – LP
当然のことながら新型コロナウィルスの影響で、日本から北欧諸国への投資活動は減少
しています。昨年行われた投資・買収は全体で20件に上りましたが、今年は8月現在で
わずか7-8件。景気後退と経済不安がその大きな要因であることは疑いもありませんが
、直接会って進めていく一般的なビジネス慣行が激変してしまったことも同じく大きな
要因でしょう。テック系エコシステムが「ニューノーマル」を模索する一方で、投資家
側にしてみれば出資する前にまずは直接会いたいと思う気持ちは変わりません。
新型コロナの影がおよそ感じられない唯一の投資家が、2020年に五つの大規模投資ラウ
ンドを終えたNordicNinja VCです。日本のLPを持ちフィンランドを拠点とするVCの
NordicNinjaは、東京のステークホルダーの存在感を維持できているという点ではコロナ
禍で身動きの取れない世界では理想的な形でしょう。
もう一社コロナ禍でできた溝を埋めるのに成功した日本企業がいます。大手商社の伊藤
忠商事です。伊藤忠は今年に入ってCleveronと緊密な提携関係を結び、またSensible 4の
7億4200万円の資金調達ラウンドに参加するなど日本と関係のあった北欧のモビリティ
企業2社との関係を築きました。また技術系分野でエストニア最大規模のVC企業が管理
するファンド、Tera Ventures 2に約2億4700万円を出資しています。
概して今年はモビリティ、ロジスティクス、および配達の分野のテクノロジーに特化し
た企業が人気だったようで、Voi(電動スクーター)、Sensible 4(自動運転
)、Cleveron(自動小包配達)、Logmore(輸送の品質管理)、 Veriff(オンラインID認
証プラットフォーム)などはその例です。
とはいえこれがポストコロナの新しい世界のニーズを反映しているのかどうかはまだわ
かりません。
それでも確実に言えるのは、日本のVCとCVCはリミテッドパートナーとして北欧の仲間
達との可能性を探ろうとしていること、そして現地パートナーの力を借りて世界的なロ
ックダウンの溝を埋めようとしていること。デジタルサービスを支援する北欧のテクノ
ロジーは依然必要とされています。