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北欧のAIエコシステムの概要

北欧諸国といえば各種世界ランキングで上位国の常連と言われています。そしてそれはAI分野も例外ではあ
りません! Oxford Insightが2020年9月25日に発表した「AI導入に備えて政府として必要な能力や実現可
能な要因」を調査する『政府のAIレディネス』ランキングによると、今年はフィンランド3位、スウェーデン5位、
デンマーク8位、ノルウェー10位、エストニア17位(日本は13位)という結果が出ました。

公平を期すために付け加えておくと、これはAIの実際の導入状況や、AI技術のエコシステムの強さを示すラ
ンキングではなく、「AI開発を後押しするための必須条件―デジタル社会、デジタルに精通する市民、および
デジタル化の価値を理解してそれを推進していく政府」を表しています (e-Estonia.com)。

本号では、北欧のAIエコシステムの概要について簡単にご紹介します。そして大切な情報として詳細の入手
先についてもご紹介します。

概してスウェーデンとフィンランドは、AI国家北欧の中でリーダー格の国々です。スウェーデン政府はAI開発
を推進するための明確な戦略に沿って、昨年2月AI Swedenを立ち上げました。またWallenberg Foundation
が主にWallenberg AI プログラム WASPで3億ユーロ(約366億円)を資金提供するなど、スウェーデン
にはとても恵まれた環境があります。

そして今まさにAI Sweden、Ignite Sweden 、RISEは全国の優秀なAIスタートアップのスクリーニングを行っ
ています。先週まずは90社のスタートアップがスウェーデンAIランドスケープマップで紹介されました。今後も
まだその数は増えるかもしれません。登録の締め切りは10月30日です。

フィンランドはAIトランスフォーメーションを社会全体の取り組みとし、AI で卓越するための幅広い対策を行
ってきました。その一例がヘルシンキ大学とReaktor Venturesが開設したElements AI Program。無料でAI
の基礎が学べるオンラインコースで、これまでに50万人を超える人々が受講しています。

2020年9月、FAIA (Finland’s state funded Artificial Intelligence Accelerator、フィンランド国家出資によ
る人工知能アクセラレーター)は、フィンランドのAIセクターの展望についてまとめたレポート “State of AI in
Finland”(「フィンランドのAI事情」)を発表しました。報告書によると、フィンランドには400社を超えるAIスタ
ートアップがあり、一年に50社近くが起業しているとのこと。2020年度のグローバルスタートアップエコシス
テムレポートでは、ヘルシンキをロンドン、ベルリンと並ぶヨーロッパのトップAIエコシステムに位置づけてい
ます。フィンランドのAI関連スタートアップはヘルシンキ市だけでなく、海外投資家にとっても注目株でしょう。
また他の北欧諸国も比較的AIエコシステムが強いとされています。最新のマッキンゼー社の調査(2019)では、
「デンマークは様々なAI分野の中でも特にアルゴリズム、オーディオやロボティクス、コンピュータービジョ
ンの機械学習、そして自然言語処理などで強力な環境下にあり、これらの研究において最前線の国」と記し
ています。

北欧のAI関連企業は世界的な知名度は決して高くなく、そのスタートアップの多くはステルスモードを使用
しています。とはいえ、ヘルスケアやサイバーセキュリティ分野の北欧AI企業は急速に増加していて、北欧
は今後もこの分野でエコシステムのリーダー格であり続けると予測されています。そしてRealeyes、Veriff、
Transferwise やBoltなどエストニアのAIスタートアップ企業はすでに日本の投資家から資金を獲得してい
ます。

ディープテックも北欧が得意とする分野です。北欧AIコミュニティの支援団体、非営利でコミュニティベース
Nordic.AIは400社を超える北欧のAIスタートアップと活動を共にしていますが、その多くがこの分野の企
業です。

北欧のAIエコシステムに関心のある方は是非お問い合わせください。お探しの人材や組織と皆様をお繋ぎ
いたします。